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我が国の空き家問題を考える

近頃の少子化や地方における人口減少によって浮き出た空き家問題。「空き家を積極的に活用しよう」という事例や、近年の新型コロナウイルス感染症の流行による地方移住の促進は聞かれますが、依然として解消には遠い道のりです。しかしこのまま放置しておくわけにいかないのは景観の悪化、放火による火災、雪の重みによる倒壊や落雪が免れないからです。空き家として残される家屋には耐震性の問題や建物や内部の老朽化等、目を背けては通れない問題が多くあります。このコラムをきっかけに私たちと共に空き家問題に向き合い、考えを深める第一歩を踏み出していただけると幸いです。

日本の空き家状況を数値化したデータ

まず我が国の空き家問題の全体像を捉える調査結果から見ていきましょう。平成30年度の住宅・土地統計調査の結果、空き家数は848万9千戸と過去最多となり、全国の住宅の13.6%を占めていることが分かっています。 この数字は、空き家数、空き家率ともに過去最高となります。空き家率を都道府県別に見ると、最も高いのは山梨県の21.3%、次いで和歌山県が 20.3%、長野県が19.5%、徳島県が19.4%、高知県及び鹿児島県が18.9%と続きます。

なぜ空き家が増え続けるのか?

空き家率1位の山梨県を例にあげてみると様々な要因が見えてきます。まず、山梨県は東京都心まで2時間程で移動できる利便性が高い立地。しかし山間地が多いという土地柄が足かせとなり、新興の住宅地が造成され難く若い家族が住み着く環境が十分ではありませんでした。仕事を求めて東京方面に移住する人が後を立たずに少子化と核家族化が過疎化を後押ししてしまう結果となっています。加えて、日本には農地(田んぼや畑)の売却に対して厳しい規制があり、兼業農家の多い山梨県では地方部の住宅の再利用が進まなかった事も大きな要因となりました。そして山梨県の高い空き家の数値の原因には別荘地の存在も一因と考えられています。山梨県には富士五湖、八ケ岳といった景勝地があり、その周辺に別荘が約2万軒ほど建ち並んでいます。このような二次的住宅を含め、高い空き家率という結果だと受け止められています。

空き家が発生する原因と、放置される要因

郊外の空き家は山梨県と同様の要因が多く考えられますが、では都市部についてはどうでしょうか。利用価値が高い土地でありながら入居需要もある都市部においても空き家は多く発生しています。最も一般的な原因は、自宅を所有する高齢者が老人ホームなどの高齢者住宅や子供宅などに転居することです。 今後も高齢者は増える一方であることから、それに伴う空き家も増え続けてしまうと考えられています。

こうして一度空き家となってしまった住居が放置され続ける理由は大きく4点が考えられます。

①固定資産税の軽減措置
よく住宅を壊して更地にすると「税金が上がる」と言われます。不動産の所有者は毎年、固定資産税と都市計画税を支払う義務がありますが『居住用建物が存在する』ことを条件に最大で1/6まで減額される軽減措置があります。空き家を解体してしまうと軽減措置が受けられなくなります。

②解体する際の費用負担
建物を解体する場合には、当然費用がかかります。 解体費用は建物の大きさや敷地の広さによって異なりますが、場合によって100万円単位の費用負担が想定されます。解体費を負担して建物を解体しても、更地になってしまっては固定資産税の特例がなくなり税率が上がってしまいます。

③解体後に再建築不可
日本の土地利用には、都市計画法により一定の制限がかけられています。現在の空き家が建っている地域が市街化調整区域(予め建築用途が定められている区域)に含まれていた場合、元々は規制がなく自由に戸建てを建築出来ていたとしても、解体後にはその土地に建物建築が出来ないというケースがあります。

④誰が相続するかまとまらない
元の所有者が亡くなり、誰が相続するか確定できないために、解体やリフォームができない場合があります。

日本政府の空き家対策は?

上記のような根本的な問題の解決に向かうために、国家単位、地方自治体単位での空き家対策が進められています。例えば、日本政府が進める「空家等対策の推進に関する特別措置法(平成27年施行)」により以下の事柄を市町村単位で施策することが可能となりました。

・空家等への立入調査
・所有者等を把握するための固定資産税情報の内部利用
・空家等及びその跡地の活用
・空家等対策の円滑な実施に要する費用補助、税制上の措置
・適切な管理のされていない空き家を「特定空家等」に指定
・特定空家等に対する除却、修繕、立ち木伐採措置への助言・指導・勧告・命令
・行政代執行による強制執行

空き家を放置し続けて特定空き家へ認定されると、固定資産税が6倍になり、状況を改善するよう自治体より助言・指導、勧告、命令されます。 命令に背くと50万円以下の罰則金を支払わなければならず、それでも改善が見られない場合は行政代執行により空き家が解体されてしまいます。

空き家を活用するための区市町村事業としては、補助・助成金などの制度が設けられています。

・全国版空き家・空き地バンクの構築
・自治体の補助金制度
・地方への定住移住の支援策
・空き家・空き地バンクへの登録
・田舎暮らしを支援するNPO法人等に情報提供
・0円の空き家物件として売り出す
・居住用として賃貸にする

空き家問題に向き合い続けること

先日、栃木県宇都宮へ訪れる機会がありました。宇都宮には多くの大谷石蔵という大谷石で作られた蔵が立ち並んでいます。洋風建築にも見えるずっしりとした佇まいは、かつて米の貯蔵庫などに利用されていたようですが現在ではカフェやコミュニティスペースとしても活用されています。以前に比べ郊外へ関心を向けられる目が増えているこの時代を機に、空き家や空き地の積極活用を追い続けていきたいと思います。

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