インボイスの登録受付が2021年10月から開始されて約1年、いよいよ来年秋にインボイス制度が本格導入されます。不動産賃貸経営をされているオーナー様は気になっておられるのではないでしょうか。事務所ビルや店舗ビルを賃貸しているオーナー様、その他にも事業用の駐車場を貸している、太陽光発電パネルを設置している、アンテナ基地局収入がある、このような場合も影響を受ける可能性がありますので、対策の検討をしておくことが大切です。今回のコラムではこの「インボイス制度」について、今一度おさらいをしていきましょう。
インボイス制度とは適格請求書等保存方式をとる、所謂“消費税”に関する制度の変更です。消費税が課税されないアパートやマンションなどの住宅の賃貸にはインボイス制度の影響はないものの、先述の通り、マンション1階の店舗家賃、屋上の太陽光発電収入、アンテナ基地局の設置収入などは消費税の課税対象なので注意が必要です。
【消費税が課税されるもの】
店舗・事務所・倉庫の賃貸収入、駐車場の賃貸収入、太陽光発電収入、アンテナ基地局の収入、賃貸期間が1ヶ月未満の住宅家賃収入、賃貸建物の売却収入など
【消費税が課税されないもの】
住宅の家賃、駐車場賃料(家賃に含まれている場合)、土地の賃料、土地の売却収入など
請求書に「それぞれの品目が軽減税率の対象かどうか」「税率ごとの合計金額」「発行した事業者の番号」といった内容を記載する必要が生じ、それらを満たさないものは「インボイス(適格請求書)」とは認められなくなります。
ここで、対応が必要となる場合についてまとめてみましょう。
物件種類 | オーナーの状況 | 対策 |
---|---|---|
住宅の家賃収入のみ | 消費税は非課税 | インボイス対策の必要なし |
事務所・店舗等の家賃収入あり &テナントが免税事業者 | 免税事業者 | インボイス対策の必要なし |
事務所・店舗等の家賃収入あり &テナントが課税事業者 | 免税事業者 | インボイス対策を検討 |
事務所・店舗等の家賃収入あり | 課税事業者 | インボイス発行事業者の登録をする |
インボイス制度は6年間で段階的に導入されることになっていますが、まず2023年10月1日にインボイス制度が導入されると「適格請求書(インボイス)」が仕入税額控除の新たな要件になります。「適格請求書(インボイス)」ではない従来の請求書では、仕入税額控除が受けられなくなってしまうのです。同時に、取引先に対して適格請求書(インボイス)を発行しないことで相手方が不利になってしまう事態が発生します。
仕入税額控除・・・受け取った消費税から支払った消費税を差し引くこと
では、どうすればインボイスが発行できるようになるのか?条件となるのが、課税事業者であり、適格請求書発行事業者の登録をすること。(詳細は後述) ただし、免税事業者(2年前の課税売上が1,000万円以下の人を指します)も、消費税の課税事業者になることを選択して適格請求書発行事業者の登録を受ければインボイスを発行できるようになります。取引先が仕入税額控除が受けられないことを考慮すると、適格請求書発行事業者登録の検討が推奨されます。取引先企業が消費税分の割引を求める、或いは免税事業者との取引を避けて課税事業者との取引を選んでしまう可能性が考え得るからです。
インボイス発行事業者の登録は2023年3月1日までに申請を完了させておきましょう。
適格請求書には従来の区分記載請求書に「登録番号」、「適用税率」及び「消費税額等」の記載が必要となります。
適格請求書の記載事項
①適格請求書発行事業者の氏名又は名称及び登録番号
②取引年月日
③取引内容(軽減税率の対象品目である旨)
④税率ごとに区分して合計した対価の額及び適用税率(軽減税率への対応)
⑤税率ごとに区分した消費税額等
⑥書類の交付を受ける事業者の氏名又は名称
上記のうち、登録番号は税務署長の登録を受けた適格請求書発行事業者のみに通知されるものです。このような訳で適格請求書を発行できるのは登録済みの事業者だけということになります。
インボイス制度が導入される理由として、免税事業者にとって消費税部分が利益になってしまう「益税問題」を解消する為だと言われています。今後、免税事業者に係るデメリットを避けようと、多くの免税事業者が「課税事業者」となることが考えられます。結果としてインボイス導入によって免税事業者が激減するのではないかと予測されています。
「事業者の番号」を取得するには、国税庁への登録申請が必要となります。また、国税庁に登録申請を行うことで正式にインボイス制度に対応した事業者(適格請求書発行事業者)であるということが認められます。早期に事前準備を完了させ、申請手続きを行うことをお勧めします。
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